【古典魔法の術式と魔法円】
―ジュブジ・シノラ著
〇呪文と術式
古典魔法を発現するためには「呪文詠唱」が必要だが、古典魔法は手順のすべてを術者自ら行わねばならないので、それ自体が非常に複雑なものになっている。さらに当然ながらそれらの詠唱はすべて古代語で行なわれなければならない。このような要因から初心者にとって古典魔法は難解だと受け取られやすいが、ありがたいことに現代には先人たちの知恵を結集した魔道書がある。私たちは魔道書にある術式を組み合わせることさえすれば、立派な呪文が完成するのだ。
〇呪文の内容
1.術者の宣言
まず術者の名前、使用する魔法の名称の宣言を行なう。しかし呪文のはじめに術者が名乗るのはもはや古典魔道士の通例となっているが、実際は省略しても問題はないことが近年証明された。魔法の名称の宣言については、その魔法の種類によってこれ以降の形式がある程度決まっているため、名称と形式が異なる場合は魔法は発現しない。
2.この呪文で扱う分の魔力量の宣言
これによって想定する魔法の規模、威力、効果範囲、射程などに必要な魔力量(MP)の総計が決定する。実戦においては基本的にこれらの計算をできる限り臨機応変かつ瞬時に行なうことが前提となる。多くの場合、術者が想定する魔法の形態から逆算して必要魔力量を求める。
(必要魔力量計算式は本書4章を参照)
3.魔法属性の変換
古典魔法では炎や氷、毒や眠りなど、いずれかの属性に変換して発現する。この変換術式を省略した場合、魔法は属性を持たないいわゆる「無属性」の状態で発現するが、この状態では効果は十分ではない。
(変換術式については本書6章を参照のこと)
4.発現形態
攻撃魔法ならどのような形態にして、どのように対象に攻撃をするかを決定する。多く使われているのは強撃術式(魔力を一点に集めて威力を上げる)や拡散術式(魔力を分散させ広範囲に効果を及ぼす)などである。氷魔法で例えれば、強撃術式を使って氷に変換した魔力を集中させると巨大な氷の刃となり、拡散術式で氷の粒を巻き起こせば吹雪となる。ここで重要なのは自分の思い通りに魔法を発現する能力と、なによりそれを思い描く術者の想像力なのだ。
(発現形態術式については本書7章参照)
5.必要数値の算出
魔法の規模、威力、効果範囲、射程などを決定する。手順2で使用する魔力量と手順4で魔法の形態は決まっているので、厳密には使用する魔力量の内訳を決めることになる。たとえば強撃術式を用いるなら相応の魔力量を威力に割り振る必要がある。また魔法力減衰の法則により、基本的に発現した魔法が術者から離れれば離れるほど魔法効果が弱まっていくため、射程つまりは対象との距離感をつかんで置くことが非常に肝要である。
6.魔法の発現残るは魔法を発現するだけだ。手順1~5までで全ての呪文詠唱は終わっているので、あとは魔法体系理論関係なく、発現のタイミングを実戦を通して学ぶしかない。
〇魔法円
古典魔法では魔法効果を多く得るために様々な魔法円が用いられるが、ここでは最も一般的に扱われるプトレリウス魔法円について紹介する。まず外周にはじまりとおわりを古代語で記し、円で閉じることで永遠、世界を表す。次に太陽の神ソトルと月の神カーサリの紋章を表し、間に剣を描く。これは創造主メルノティが世界を昼と夜に分けるときに使った剣で「夜明け薙ぎの剣」または「宵切りの剣」と呼ばれる。次に6つの小円それぞれに炎・氷・樹・雷・風・地の文字を表す。最後に六芒星の中心にアガーシャ王と3人の賢者バエルンハルト、ヴィセ、クレヴィングの名を刻む。
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